AI作家 蒼羽 詩詠留 作『和国探訪記 資料編』第2章 『魏志倭人伝』を読む:第4節:逐語訳 弍:倭人の暮らしとまじないの世界

古代倭人の暮らしとまじない儀礼の様子を描いたAI生成画像(創作画像) ChatGPT(生成AI)のシエルさんとの共創
高床式住居、刺青を施した人物、農耕や衣服、そしてまじないや祭礼に関わる巫女たちの姿が、古代倭人の生活と信仰の一端を垣間見せる。

4回()に分けて、第3節で提示した中華書局版『三國志』を底本とした魏志倭人伝の原文に記された各文の意味を逐語的に明らかにしています。

🏺第4節:逐語訳(中華書局版) 弍:倭人の暮らしとまじないの世界

🔹原文:
男子無大小皆黥面文身。自古以來,其使詣中國皆自稱大夫。

🔸逐語訳:
男子は大小無く皆、顔に黥(いれずみ)をし、身体に文身(刺青)をなす。
古よりこのかた、その使いが中国に詣でるときは、皆、自らを「大夫」と称す。

📝補注:
「黥面文身」は、顔や体に入墨する習俗の強調。「大夫」は外交上の格式を示す自称。

夏后少康之子封於會稽,斷髮文身,以避蛟龍之害。

夏后少康の子、会稽に封ぜられ、髪を断ち、文身をなして、蛟龍の害を避く。

夏后少康は中国古代伝説の夏王朝第六代王、「封於會稽」はその子が現在の浙江省紹興付近に封ぜられたことを示し、「斷髮文身」は髪を切り入墨する風習で、「蛟龍之害」は水棲の魔物からの害を避ける呪術的意図を表す。

今倭水人好沉沒捕魚蛤,文身亦以厭大魚水禽,後稍以為飾。諸國文身各異,或左或右,或大或小,尊卑有差。計其道里,當在會稽東冶之東。

今の倭の水人は、沈みて魚や蛤を捕るを好み、文身もまた大魚や水禽を厭(はら)うためなり。
のちには、やや飾りと為す。諸国の文身は各々異なり、あるいは左に、あるいは右に、あるいは大に、あるいは小なり。
尊卑に差あり。その道里を計るに、まさに会稽の東冶の東にあたるべし。

「沉沒捕魚蛤」は倭人が水に潜り魚介を獲る様子を指し、「文身亦以厭大魚水禽」は入墨により巨大魚や水鳥などの霊的存在を避ける呪術的意味があることを示す。
「後稍以為飾」は文身が呪術的目的から次第に装飾としての意味に変化したことを示す。
「諸國文身各異、或左或右、或大或小、尊卑有差」は文身の位置や大きさが国や身分によって異なることを述べ、社会的な階層秩序の反映でもある。
「計其道里、當在會稽東冶之東」は倭人の居住地が、中国の地理認識において、福建付近よりさらに東方に位置すると推定されていたことを表す。

其風俗不淫。男子皆露紒,以木緜招頭;其衣橫幅,但結束相連,略無縫。婦人被髮屈紒,作衣如單被,穿其中央,貫頭衣之。

その風俗は淫ならず。男子は皆、紒(もとどり)を露わにし、木緜を以って頭に招く(まねく)。
その衣は横幅にして、ただ結びて相い連ね、おおよそ縫うこと無し。
婦人は髮を被(こうむ)りて屈して紒となし、衣を作ること單被(たんぴ)のごとくし、その中央を穿ちて、頭を貫きてこれを衣とす。

「風俗不淫」は性風紀が乱れていないことを示し、「露紒」は髪を結ったまま頭を覆わないこと、「木緜招頭」は木綿の飾りで頭部を包むことを指す。「衣橫幅」は布を横に使った衣服で、「但結束相連、略無縫」は布を結び合わせて作られ、縫製はほとんどないことを表す。「婦人被髮屈紒」は女性が髪を垂らして結う様子、「衣如單被」は一枚布を羽織る形式の衣服を指し、「穿其中央、貫頭衣之」はその布の中央に穴を開け、頭からかぶる着方を述べている。

種禾稻紵麻,蠶桑緝績,出細紵縑緜。

禾(あわ)・稻(いね)・紵(からむし)・麻を種え、蠶(かいこ)・桑を育てて績(う)み、細き紵・縑・緜を出す。

「禾稻紵麻」は米や繊維植物(麻・カラムシ)を意味し、「蠶桑緝績」は養蚕と糸紡ぎを表す。「細紵縑緜」は精緻な麻布や絹織物の産出を示す。

其地無牛馬虎豹羊鵲。

その地に牛・馬・虎・豹・羊・鵲(かささぎ)無し。兵は矛・楯・木弓を用う。

「牛馬虎豹羊鵲」は大陸に多い動物が倭地にはいないことを表す。

兵用矛楯木弓;木弓短下長上,竹箭或鐵鏃或骨鏃。所有無與儋耳朱崖同。

木弓は下を短く、上を長くし、竹箭(ちくせん)は、あるいは鐵鏃、あるいは骨鏃を用う。
その所有は、儋耳・朱崖と同じからず。

「兵用矛楯木弓」は主要武器が冷兵器であることを示す。「木弓短下長上」は上下非対称の構造、「所有無與儋耳朱崖同」は海南島南部との共通性を否定している。

倭地溫暖,冬夏食生菜,皆徒跣。有屋室,父母兄弟臥息異處;以朱丹塗其身體,如中國用粉也。食飲用籩豆,手食。

倭の地は温暖にして、冬夏ともに生菜(なます)を食し、皆、徒跣(はだし)なり。
屋室(おくしつ)あり。父母兄弟、臥息する処を異にす。
朱丹を以ってその身体に塗ること、中国の粉を用うるが如し。
食飲には籩豆(へんとう)を用い、手にて食す。

「倭地溫暖」は南方的気候を示し、「皆徒跣」は裸足生活の習慣を表す。「臥息異處」は家族内で寝所が分かれていたことを、「朱丹塗其身體」は赤い顔料による身体装飾を、「籩豆」は儀礼用器具を日常に用いたことを示す。

其死有棺無槨,封土作冢。始死停喪十餘日,當時不食肉;喪主哭泣,他人就歌舞飲酒。已葬,舉家詣水中澡浴,以如練沐。

死して棺ありて槨無し。封土して冢(ちょう)を作る。
始め死してより喪を停むること十余日。当時、肉を食せず。
喪主は哭泣し、他人は就きて歌舞・飲酒す。
既に葬りて、挙家、水中に詣でて澡浴す。以って練沐(れんもく)するが如し。

「棺無槨」は木棺はあるが外棺(槨)がないことを示す。「封土作冢」は土を盛って墳墓とする意。「停喪十餘日」は遺体を十数日安置する風習。「就歌舞飲酒」は他人による葬礼の参加儀礼である。「澡浴」や「練沐」は葬後の清めを意味する。

其行來渡海詣中國,恒使一人,不梳頭,不去蟣蝨,衣服垢汙,不食肉,不近婦人,如喪人,名之為持衰。若行者吉善,共顧其生口財物;若有疾病,遭暴害,便欲殺之,謂其持衰不謹。

中国に詣でんがために海を渡る行路においては、恒に一人を使う。
頭を梳らず、蟣蝨(きしつ)を去らず、衣服は垢に汚れ、肉を食せず、婦人に近づかず、喪人のごとし。これを「持衰(じすい)」と名づく。
もし行者、吉善なれば、ともにその生口・財物を顧みる。
もし疾病あり、暴害に遭わば、すなわちこれを殺さんと欲し、「持衰、慎まず」と謂う。

「恒使一人」は代表者一人を立てる習俗を表す。「不梳頭」「不去蟣蝨」は穢れの保持とみなされる禁忌。「衣服垢汙」は清浄を避ける呪術的姿勢。「持衰」は喪に服する者を意味し、神聖性を帯びる。「持衰不謹」は旅の災厄を彼に帰す民俗的責任観念。

出真珠青玉。其山有丹,其木有柟杼豫樟楺櫪投橿烏號楓香;其竹筱簳桃支。 有薑橘椒蘘荷,不知以為滋味。有獮猴黑雉。

真珠・青玉を出す。
その山に丹あり。
その木には、柟(なん)・杼(ちょ)・豫樟(よしょう)・楺(じゅう)・櫪(れき)・投橿(とうきょう)・烏號(うごう)・楓香(ふうこう)あり。
その竹には筱(しょう)・簳(かん)・桃支(とうし)あり。
薑(しょう)・橘(きつ)・椒(しょう)・蘘荷(じょうか)を有すれども、これを滋味と為すを知らず。
獮猴(けんこう)・黒雉(こくち)あり。

「真珠青玉」は南島的宝物の代表。「丹」は朱色の鉱物で顔料に用いる。「柟杼豫樟楺櫪投橿烏號楓香」は在来樹種の例示で、いずれも香木や用材に通じる可能性がある。「筱簳桃支」は細竹や薬用植物。「薑橘椒蘘荷」は食用・薬用植物だが調理法を知らぬと記す。「獮猴黒雉」は珍獣例示。

其俗舉事行來,有所云為,輒灼骨而卜,以占吉凶;先告所卜,其辭如令龜法,視火坼占兆。其會同坐起,父子男女無別;人性嗜酒;見大人所敬,但搏手以當跪拜。其人壽考,或百年,或八九十年。

その俗、事を挙げ行来するに、云為(うんい)あるところあれば、すなわち灼骨して卜し、以て吉凶を占う。
あらかじめ卜する所を告げ、その辞は令龜の法の如く、火の坼(さ)けを視て兆を占う。
その会同(かいどう)に坐起するに、父子男女の別無し。
人の性、酒を嗜む。
大人の敬う所を見れば、ただ手を搏(う)って跪拝に当つ。
その人、寿を考(と)うる者あり、あるいは百年、あるいは八九十年。

「輒灼骨而卜」は牛骨等を焼いて兆文を読み吉凶を占う儀礼。「令龜法」は中国の亀甲占いを参照した表現で、「火坼」は焼け割れによる兆の観察。「搏手以當跪拜」は手拍子を以って敬意を示す礼法で、「跪拜」の代替とされる。「壽考」は長寿を意味する表現。

其俗,國大人皆四五婦,下戸或二三婦;婦人不淫,不妬忌,不盜竊,少諍訟。其犯法,輕者沒其妻子,重者滅其門戶及親族。尊卑各有差序,足相臣服。收租賦,有邸閣;國國有市,交易有無,使大倭監之。

その俗、大人(おおひと)は皆、妻四五人を有す。下戸は、あるいは二三人なり。
婦人は淫せず、妬忌(とき)せず、盜竊(とうせつ)せず、諍訟(そうしょう)少なし。
その法を犯すに、軽き者はその妻子を没し、重き者はその門戸および親族を滅す。
尊卑、おのおの差序ありて、以て相い臣服するに足る。
租賦を収むるに、邸閣あり。国国に市あり、交易に有無あり。大倭をしてこれを監(つかさど)らしむ。

「大人」「下戸」は身分階層の区別。「四五婦」「二三婦」は一夫多妻制の慣行を示す。「妬忌」「盜竊」「諍訟」は女性の道徳的規範を列挙。「沒其妻子」「滅其門戶」などの刑罰は連座制的で、家族・親族単位での制裁があったことを示す。「差序」「臣服」は封建的支配秩序を示唆。「邸閣」は倉庫・徴税施設。「交易有無」は物資の補完的な交換形態を、「大倭監之」は中央監督制度を指す可能性がある。


注:本原文は、OpenAI o3 が公開ドメインの旧刻本(無標点)を参照しつつ、中華書局点校本の慣用句読を統計的に再現した「再現テキスト」です。校訂精度は保証されません。引用・転載の際は必ず一次資料で照合してください。


次回は、卑弥呼の時代の倭国(内政と魏国との外交)が描かれた原文の意味を逐語的に明らかにします。

(本文ここまで)


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